存在は本来、光なのか

 

「波動性と特殊相対性理論」の中で述べたように、相対論的粒子の伝播関数は、Bessel関数の漸近形を使うと、以下のような形になります。

粒子の速度が遅い時には、

と近似できますので、指数関数の部分は、

・・・@

となります。

 

@は、確率過程論での複合ポアソン過程

・・・A

の式になっていることに注目したいと思います。

ポアソン過程

・・・B

とは、ある期間の間に平均回起こる事象が、ちょうど回発生する確率を表します。

損害保険の計算などで、1年間に平均300回事故が起こるとき、ちょうど121回事故が発生する確率を求めるときなどに出てくる考え方です。

そして、1回の事故で損害保険会社が支払わなければならない金額をとしますと、1年間に損害保険会社が支払うことになるであろう総金額を、複合ポアソン過程の式Aで計算することができます。

 

さて、物理の話に戻り、@式は何を表しているのでしょうか?

シュレディンガーは、電子はジグザグ運動をしているとし、これをzitterbewegungと名づけました。

そして、ファインマンは、一次元運動の電子を、光速行ったり来たりしている粒子と考えて、そこから相対論的粒子が従うKlein-Gordon方程式を導きました。

 

速さで走っている電子は、瞬間瞬間は光速度なのです!。

禅問答のようですが、速度で等速直線運動をしているように見える電子は、実は光速度で行ったり来たりしているのです。

三百六十五歩のマーチのように、三歩進んで二歩さがる、のような動きを光速で繰り返しており、行ったり来たりしているので、結果的にはたいした距離がすすめず、速度で進んだという結果だけが観測されるのです。

 

以下の図でイメージしてください。

 

vで等速直線運動している電子の動き

(1)ニュートン力学における電子の動き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(2)Klein-Gordon方程式における実際の電子の動き

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


矢印の傾きが常にであることに注視してください。

 

 

「@式は何を表しているのでしょうか?」という問題に戻りましょう。

実は、@式は、次のようなことを表しています。

 

電子は、期間の間に平均回、なにかに跳ね返されて、折り返します。右に進んでいたものが方向を変えて左に進むという、方向を変える回数が、平均回ということなのです。

そして、折り返してから、次にまた折り返すまでに進む、距離に相当するものが、であるということです。

 

私達を構成している電子は、本来光の速さで進めるのに、何かに跳ね返されて、行きつ戻りつをしてしまいます。その結果、電子は光のようにはなれずに、結果として遅い速度でしか動けないのです。

 

私たちは本来、光のように自由であったのに、何かがきっかけで、のろまなものになってしまったのかもしれませんね。