質量というものを想定する誤謬
光は粒なのか波なのか、電子は粒なのか波なのか、ニュートン、ホイヘンス、アインシュタイン、ドブロイなど多くの物理学者達によって議論されてきたことです。現在では光や電子は粒でもあり波でもあるとされています。シュレディンガー方程式で表現される波動関数であり、かつ、ネルソンの確率力学で表現されるブラウン運動する粒子であるとされています。いわゆるボーアが提唱した相補性です。
「経路積分に見る波動性と粒子性の二重性、そしてより根源的な存在」の中でも、二重スリットの実験における波動性と粒子性の二重性は相反する概念ではないというお話をしました。スクリーン上で観測されるアットランダムな輝点はブラウン運動する量子力学的粒子を表すものであるというお話もしました。
一方、「まえがきと更新履歴」の中では、この世は波動性で説明できると私は言っています。素粒子などは否定するとも言っています。
粒子は存在するのでしょうか、存在しないのでしょうか?
今回は、一見粒子の存在を裏付けるように見えるブラウン運動を使って、逆に粒子性を否定してみます。さらに粒子や物質の最も典型的な特徴である質量の概念を否定します。
ニュートン力学以来、と書けば物理学では質量を表すものというのが常識でした。今回の考察では、今までと書いていたものが、質量ではなく実は別の概念を表すものであることが解き明かされます。
今回の考察を読み終わって、もし内容が納得できれば、あなたは自分自身が素粒子などから出来ている「物」ではないことが 腑に落ちるでしょう。「物」ではない自分なんて恐くて考えられないという方は、これ以上読み進まないで、今すぐこのページを閉じて下さい。
では参ります。
スライドグラスに花粉をのせ、そこに水滴をたらしてカバーグラスをかぶせ、顕微鏡で観察します。すると、花粉の粒子が小刻みで不規則な運動をしているのが観察されます。この運動がブラウン運動です。
ブラウン運動の特徴には、以下のようなものがあります。
@微粒子は小刻みに移動したり回転したりするが、その動きはきわめて不規則である。
A不規則運動は微粒子の種類、密度にはよらない。
B微粒子が浮いている液体が粘っこいほど不規則運動は不活発になる。
C不規則運動は決して止まらない。
特徴AとBから、微粒子が浮いている液体のほうにブラウン運動の原因があることがわかります。実際、特徴Aから、ブラウン運動は微粒子の種類によらないので微粒子に原因があるとは考えられません。特徴Bはブラウン運動が液体の粘っこさによって変わることを示しており、このことから液体のほうに原因があると考えられるのであります。
「ブラウン運動について以下の式が成り立っている。
・・・D
ここで、上式左辺は、ブラウン運動する物体の平衡位置からのずれの2乗の平均である(系は1次元とする)。は気体定数、は絶対温度、は易動度(媒質の粘性に関係し、ブラウン運動する物体の速度をとすると、はその速度に比例する抵抗力となる)、は十分経過した時間(極限としては、 → ∞)である。そして、がアボガドロ定数である。アボガドロ定数以外は、観測によって求められる量であり、フランスの物理化学者ジャン・ペラン(J. B. Perrin、1870 - 1942)が、 = 6.5 × 1023(資料により値が異なる)という値を得ている。」(ウィキペディア「ブラウン運動」より抜粋)
ここで、
・・・E
は、分散(ボラティリティーの二乗)を表しています。つまり「拡散しやすさ」です。が媒質の粘性に関係する易動度ですので、が大きいと拡散しにくく、が小さいと拡散しやすくなることがわかります。つまり、媒質が粘っこいとブラウン運動は不活発になり、逆に媒質がさらさらしているとブラウン運動は活発になります。
E式を書き換えていきましょう。
において、気体定数はボルツマン定数を用いると
ですので、
となります。
つまり、ボラティリティーは、
となります。
「波動性からプランクの黒体輻射の公式を導いてみる」や「特殊相対性理論と量子条件、そして経路積分」などの中でやったように、
の関係を用いると、
・・・F
と最終的に表せます。ブラウン運動の特徴であるボラティリティーは、媒質の粘性によって決まるというわけです。(微粒子の性質には決してよらないということに注意してください。)
さてここで、量子論の話に戻ります。「経路積分に見る波動性と粒子性の二重性、そしてより根源的な存在」の中でお話しましたように、電子などの量子力学的粒子もブラウン運動をしていました。これは二重スリットの実験で、スクリーン上で観察される電子がアットランダムな位置で見つかることからも、電子などの量子力学的粒子がブラウン運動をしていることがわかります。
つまり、電子などの量子力学的粒子は、水に浮ぶ花粉のようにふらふらとブラウン運動しているのです。
このブラウン運動のボラティリティーは、「ポテンシャルエネルギーと華厳構造」や「経路積分に見る波動性と粒子性の二重性、そしてより根源的な存在」でお話しましたように、
・・・G
でした。は電子など量子力学的粒子の「質量」です。
F式とG式を比較して見ますと、
つまり、
という関係式が導けます。
これは、非常に奇妙な関係式です。そして大きな矛盾があります。つまり、
ブラウン運動の特徴である拡散しやすさを表わすボラティリティーが、
花粉の例では、その媒質である水の粘性によっているのに対し、
電子のような量子力学的粒子の場合は、ブラウン運動している微粒子そのものの質量によっていると言うのである!???
冒頭でお話しましたように、ブラウン運動の原因は微粒子が浮いている液体のほうにあって、「微粒子の種類によらない」と言うのに、量子力学的粒子の場合は微粒子のほうにあると言うのである。電子の質量と陽子の質量、クォークの質量など素粒子と呼ばれているものの質量はそれぞれ異なりますから、量子力学的粒子の場合のブラウン運動の原因は「微粒子の種類による」ということになってしまいます???。
この矛盾はどこから生まれたのでしょうか?
この矛盾は、質量の素粒子と言うモデルを想定したことによります。そして、質量の電子など量子力学的粒子が、水に浮ぶ花粉のようにふらふらとブラウン運動しているというモデルを想定したことによります。
と呼ばれるものは、実は素粒子の質量などではないのではないでしょうか。
ニュートン力学以来、は「質量」と呼ばれ、粒子の特性とされてきました。
しかし、量子論の時代になって、このようにブラウン運動と慎重に比較してみますと、は素粒子の特性ではなく、何かその背後にある「媒質」の特性ということになります。
は「場の粘性」というようなものに近いと私は思っています。
ニュートン力学以来、は「質量」と呼ばれてきましたが、質量という概念は誤謬である可能性があります。つまり、質量で区別される素粒子などと言うものを考えること自体、意味の無いことだと私は思っています。
つまり、二重スリットの実験でスクリーン上で観測されるアットランダムな輝点は、素粒子などではないのです。
Appendix
「経路積分に見る波動性と粒子性の二重性、そしてより根源的な存在」の中で、
量子力学的粒子では、
位置座標が、
・・・H
程度ばらついていること、
運動量が、
・・・I
程度ばらついていること、をご紹介しました。
H式とI式より、
となります。少し変形してみましょう。
において、
(ニュートンの運動方程式)、 ですので、
です。
と書いてみれば、は速度に比例する抵抗力と読めますので、
は、易動度ということになります(上記ウィキペディアの部分を参照)。
つまり
あるいは、 となります。
このことからも、が、媒質の粘性を表わすものであることが推察されます。
は量子力学的粒子と呼ばれているものの質量ではなく、その背後にある場の粘性を表しています。
体重計に乗ったときの私たちの重さって一体何なのでしょうか???