Dirac場の畳み込み
波動関数の主要形は一般に、
と書けます。ここには作用で、ラグランジュアン密度を用いると、
と書くことができます。Dirac場のラグランジュアン密度は、
です。
一方、Dirac方程式
より、Dirac場は以下のように解くことができます。
ここに、は、Dirac場の伝播関数です。
Dirac場の複素共役は、
ですので、ラグランジュアン密度は、以下のように書けます。
従いまして、作用は、
となり、波動関数は、
となります。
いろいろな場の作用の主要項をここで整理しておきましょう。
@Klein-Gordon場(「諸行無常と相対論的粒子場」を参照)
ADirac場
B電磁場(「その式とは」を参照)
あるいは
C重力場(「マッハの原理」を参照)
@〜Cまで見比べてみますと、どの場もみごとに、
の形になっていることが、わかります。
は、波の波源の振動を表し、は、波源から地点までの波の伝播を表しています。
波源の振動が、波を通じて、地点に畳み込まれます。
全てのの影響が、地点に畳み込まれます。
これが、デビッド・ボームのホログラフィック宇宙や、華厳経の「一滴の雫が大宇宙を宿し、一瞬の星のまたたきに永遠の時間が凝縮されている」の数学的表現なのかもしれません。
波は、電磁波であり、重力波であり、物質波でさえあるのです。
つまり、物質波(Dirac場)の場合、物質そのものが、ここに畳み込まれるのです。
過去の物質も未来の物質も、そして全宇宙の物質が、「今」そして「ここ」という場所に畳み込まれているのです。
電磁場の場合は、波は光ですので、宇宙空間の星々から出た光が、私たちの目の中に畳み込まれます。これが「見る」ということです(「唯物的自然科学観の否定」を参照)。
Dirac場の場合は、波は物質波ですので、宇宙空間の物質そのものが、一滴の雫や、毛穴の中に畳み込まれるわけです!(これは驚愕の事実です。)
その畳み込まれたものを
と置いてみますと、
となりますので、そこに畳み込まれたものと、そこにあったものとの相互作用を全てのについて足し合わせると、全作用になるのです。
この作用が最小となるところのみが現象として現れます(これが経路積分の真髄)。
現象の現れ方の鍵を握るこの作用の式が、ホログラフィック構造、もしくは華厳構造になっているということは、なんとも愉快ではありませんか!