Dirac方程式の伝播関数

 

前回、「相対論的電子場の方程式(Dirac方程式)」の中で、Dirac方程式は、

という形で書けることをお話しました。

 

Dirac方程式の伝播関数は、この行列の逆行列の形で形式的に表すことができます。

 

について

のときAの逆行列が存在して

ただし

 

ですので、ここで

 

について、行列式を計算してみますと

 

に注意して、

 

 

となります。また

 

に注意いたしますと、

 

 

 

と計算できます。

 

次に各行列要素を計算してみますと

に注意して、

 

 

となります。具体的に要素を代入してみますと、

 

・・・・・・

のように計算できます。従いまして、Dirac方程式の伝播関数は形式的に

 

 

となります。

 

 

でしたので、Dirac方程式の伝播関数は、

 

とも書けます。

 

Dirac方程式

に対して、伝播関数は形式的に、

と書けるというわけです。

また、Klein-Gordon方程式の伝播関数は、形式的に

と書けますので、Dirac方程式の伝播関数は、

とも書くことができます。

 

Klein-Gordon場や電磁場は、何とか日本語(言葉)で説明することができますが、このDirac場(スピノール場)は、もはや言葉での表現を超えた世界です。

真実をより深く知ろうとするためには、どうも言葉という道具だけでは不十分のようです。

数式にしてみて、初めてその意味を知ることができる世界があるようです。

そしてそれらは、電子や陽子、中性子を表すDirac場であり、私たちはこれらから出来ているのですから、何とも不思議です。

 

それでも無理をして言葉で説明してみますと、なんとか以下のようになります。

 

電子や陽子、中性子の世界は4つの波でできています。

つまり、です。

そして、この4つの波とは、時間の2つの方向、つまり「過去から未来」と「未来から過去」の2つと、螺旋状に回転する波の回転方向、つまり「時計回り」なのか「反時計回り」なのかの2つに関係しています。

これらの4つの波が、絡み合った世界、それが私たちの世界なのです。