マッハの原理
「古典場から量子場への道 増補第2版」の「第7章 重力の場」P200の(1.9)式より、重力場は以下の波動方程式をみたします。ここにはエネルギー運動量テンソルです。
この波動方程式を伝播関数を使って解いてみますと以下のようになり、
・・・@
重力場は、エネルギー運動量テンソルを用いてこのように書けます。
「古典場から量子場への道 増補第2版」の「第7章 重力の場」P202の(1.18)式より、重力場の作用は、以下のようになります。
・・・A
これは、「ファインマン講義 重力の理論」のP46の(4.6.5)式
と同じ内容を表していますが、A式を変形してみますと、
となります。エネルギー運動量テンソルは、
ですので、これを使ってさらに作用の式を変形しますと、
となります。これに@を代入しますと、
となります。右辺第二項は、あらゆる二時空点間のエネルギー運動量テンソルは、重力場の伝播関数を通して相互作用をしていると読めます。
そしてこれは、「ファインマン経路積分と量子力学」(R.P.ファインマン/A.R.ヒッブス著 マグロウヒル)や「量子力学と経路積分」(R.P.ファインマン/A.R.ヒッブス著 みすず書房)のP249の(9-102)式の作用
に対応します(「その式とは」を参照)。この式は電磁場の式ですが、この式ではあらゆる二時空点間の四元電流密度が電磁場の伝播関数を通して相互作用をしているというものです。
平たく言えば、私たちが動くと、重力場や電磁場を通して、宇宙の「あらゆる」存在と相互作用をするということをこれらの式は言っています。光の速さ(一秒間で地球を七回り半する速さ)でこの影響は伝わりますので、私たちが動いた影響は一瞬で地球上の全ての人々やあらゆる存在に伝わります。
逆の立場に立てば、宇宙の「あらゆる」存在の影響を受けることによって、私たちの存在が決定しているわけです。
星の影響が重要という占星術もあながち嘘ではないのですが、12星座ではちょっと足りないようです。私たちは137億光年という広大な宇宙空間にある全ての星々の影響を受け、それらの動きを敏感に感じ取っているのが実体なのですから、どんなに優れた占星術師もそんなに多大な影響を占って見て取ることは不可能でしょう。
「系を構成する要素に固有の性質は、他の全ての要素との『関係』によって決まるものであり、全ての関係が断ち切られた状態では要素固有の性質を論じ得ない」
というマッハの原理や、
「万有は縁(条件)によって生じる、つまり一切のものが関係の上に存在している」
という仏教の縁起に対応する式を、物理のいろいろなところで確かめることができます。
物理は実に楽しい学問であり哲学です。