経路積分からシュレディンガー方程式を導いてみる
すでに見てきたように、方程式
により時刻における波動関数が時刻における波動関数によって表されるということも見てきた。核は時間間隔に対する作用にを掛けたものの指数関数に比例する。短い時間間隔に対して作用はこの時間間隔のラグランジュアンにを掛けたものによって近似できる。すなわち、
・・・@
が得られる。
1次元でポテンシャルの中を運動する粒子の特別な場合、すなわち
の場合に、この式を適用してみよう。この場合@は、
となる。最初の指数部分にが現れる。がから有限だけ離れていると
はで非常に大きくなるので指数因子は
の変動に対して非常に急激に振動する。この因子が急激に振動するとき、についての積分が非常に小さくなる(他の因子は緩やかに変動するので)。がに近いときに限り(このとき指数因子はゆっくり変化する)、主要な寄与が得られる。この理由により、
とおくとが小さいところだけが積分の主要な寄与を与えるものと期待できるのである。代入すると
が得られる。最初の指数因子の位相はがの程度のときに1ラジアン程度変動するので、積分の主要な寄与はこの程度のの値によるのである。
をべき級数に展開することもできる。の1次の項だけをとればよい。これは、の2次までとることを意味する。はで置き換えることができる。その誤差はの高次である。左辺をの1次まで展開し、右辺をの1次までおよびの2次まで展開すると、
・・・A
が得られる。右辺の主要項をとると、に次の積分を掛けたものが得られる。
・・・B
左辺の主要項はそのものである。両辺がの極限で一致するためにはBの表式が1となるようにを選ばなければならない。すなわち、
となる。
Aの右辺を評価するために次の2つの積分を使わなければならない。
Aの右辺を求めると、
が得られる。もしが次の微分方程式を満たすならば、これはの1次で正しい。
これは1次元の運動をする粒子の問題に対するシュレディンガー方程式である。
以上は、「ファインマン経路積分と量子力学」(R.P.ファインマン/A.R.ヒッブス著 マグロウヒル)P72〜73からの抜粋である。