その式とは

 

荷電粒子と電磁場との相互作用を扱うのが、量子電気力学であります。

量子電気力学は、ファインマンが再構築した場の量子論です。

量子電気力学の結論では、荷電粒子と電磁場の相互作用は、以下のような経路積分で記述されます。

 

 

ここに、

 

「ファインマン経路積分と量子力学」(R.P.ファインマン/A.R.ヒッブス著 マグロウヒル)や「量子力学と経路積分」(R.P.ファインマン/A.R.ヒッブス著 みすず書房)のp249(9-102)式です。

 

この式こそ、私が驚愕した式なのです。

そして、この式のおかげで、肩から力が抜け、楽な気持ちになることが出来ました。

ものすごく美しい式です。そして、とても深遠な意味を秘めています。

 

 

は作用と呼ばれる量ですが、現象は、この作用が最小となるところだけが現れています。

この作用が最小になるところで、経路積分の波

が強めあうからです。これを最小作用の原理と呼びます。

 

現象の現れ方の鍵を握るこの作用の式の中の第二項は、

宇宙に存在する全ての荷電粒子それぞれが、ほかの全ての荷電粒子と相互作用することを考慮しなければならないと言っています。

宇宙に存在する、だけではなく、過去に宇宙に存在した、や、これから宇宙に存在するであろう、あらゆる全ての荷電粒子との相互作用を考慮して初めて、どういう現象が現れるのかが決まる、という構造になっていると、この式は言っています。

今この場所にある荷電粒子と、宇宙開闢から未来永劫までに全ての宇宙空間に存在する他の荷電粒子との相互作用を、考慮しなければ、現れる現象が決まらないと言っています。

 

そして、作用の式の中に現れる、

の構造は、全時空に存在するあらゆる荷電粒子が、ある一時空点に、畳み込まれることを表しています。

あらゆる空間、あらゆる時間に存在する荷電粒子が、電磁場の伝播関数(三次元波動方程式の伝播関数)

によって、運ばれ、という一時空点に、畳み込まれることを表しています。

 

荷電粒子と電磁場との相互作用を扱うのが、量子電気力学でありました。

荷電粒子とはいわば物質です。電磁場とは光です。

光と物質のふしぎな世界です。ファインマンの著書にも、「光と物質のふしぎな理論 −私の量子電磁力学−」(R.P.ファインマン著 岩波書店)というのがあるのを思い出しました。

 

全ては相互依存によって成り立つという仏教の「縁起」の考え方や、華厳経の「一即一切」、つまり、「毛穴の中に全宇宙が含まれる、一瞬の中に過去現在未来が含まれる」という世界観を、なにか、この式が表しているような気がしてなりません。

 

この式こそ、宇宙の深遠な仕組みを如実に表している式であり、物理と仏教とが対話を始める大きなきっかけとなる式であると思っています。