物質と反物質の対消滅と対生成
ダン・ブラウンの「ダヴィンチ・コード」がベストセラーになっています。そして、このヒットによって、前作の「天使と悪魔」も好調です。この「天使と悪魔」のキーポイントとなっているのが、反物質が物質と接触した時に起こる、対消滅という現象です。
そこで今回は、この対消滅という現象をファインマンの経路積分を使って見てみましょう。
相対論的粒子場の満たすKlein-Gordon方程式
を解くと、遅延ポテンシャル解(過去から未来へ拡がる解)は、
となり、先進ポテンシャル解(未来から過去へ拡がる解)は、
となります。
準備としまして、グリーン関数の性質を見ておきましょう。
とおくと、
です。一方、
となります。従いまして、Klein-Gordon方程式のグリーン関数は、以下を満たします。
J1は1次のBessel関数。
J1は1次のBessel関数。
グリーン関数の複素共役は、
でありますから、
となります。
相対論的粒子場の電流は、
でありますから、
電流の式の前半部で、
これらを使って、電磁場のエネルギーの式を書き換えると、
・・・粒子BC
・・・光子
・・・粒子A@
この式を視覚的に分かりやすく表わしますと、以下のようなファインマンダイアグラムになります。実線は相対論的粒子の伝播の様子を、破線は光の伝播の様子をそれぞれ表わします。
過去からやってきた@の粒子が、光を放出して、Aの方向へ進んでゆく過程と、
やはり過去からやってきたBの粒子が、光を吸収して、Cの方向へ進んでゆく過程が、
この図から読み取れます。
用いるグリーン関数の組み合わせを変えてみると、
これらを使って、電磁場のエネルギーの式を書き換えると、
この式をファインマンダイアグラムで表してみますと、以下のようになります。
これが、物質と反物質の対消滅と対生成です。
AやBは、未来から過去へ向かって時間を遡る(!)粒子です。
過去からやってきた@の粒子が、光を放出して、その粒子がAのように過去へ遡ってゆく、
未来から時間を遡ってきたBの粒子が、光を吸収して、その粒子がCのように未来へ進んでゆくと、この図は読むことができます。
AやBは、未来から過去へ向かって時間を遡る粒子ですが、これは時間を過去から未来へ進む反粒子(反物質)と考えることも出来るのです。
従いまして、@の粒子とAの反粒子(反物質)が共に過去からやってきて、ぶつかって消滅し、光が発生したと考えることも出来るのです。これが、「天使と悪魔」のクライマックスでサンピエトロ寺院の上空で起こったことです。
そして、そこで発生した光はやがて消滅し、同時にBの反粒子(反物質)とCの粒子が発生することになります。これを宇宙の創世と考えたのが、ビッグバンの理論ということになります。
ファインマンダイアグラムの直前に記述してある電磁場のエネルギーの式をじっくり眺めてみますと、時間と空間の幾重にも重なる畳み込みの概念が、この現象の背後にも存在していますね。
源泉の情報がグリーン関数(伝播関数)で運ばれては、あらゆる時間と空間で足し合わされ、その足し合わされた結果がまたグリーン関数(伝播関数)で運ばれて、あらゆる時間と空間で足し合わされ、運ばれ、畳み込まれ、運ばれ、畳み込まれ・・・。
「はじめに光ありき」やビッグバンは、現れた現象です。
その背後には、あらゆる時間とあらゆる空間の畳み込みが隠れていたのかもしれませんね。
電磁場のエネルギーの式をグリーン関数(伝播関数)の具体的な表記を用いて丁寧に書き下してみますと以下のようになります。
・・・相対論的粒子Bの伝播
・・・相対論的粒子Cの伝播
・・・光子の伝播
・・・相対論的粒子Aの伝播
・・・相対論的粒子@の伝播
実にシンプルな美しい式です。
ただしこの式には、以下のように、粒子が時間を遡るか順行するかによって32パターンのファインマンダイアグラムが一挙に表現されています。
粒子@ |
粒子A |
光子 |
粒子B |
粒子C |
備考 |
過去→未来 |
過去→未来 |
過去→未来 |
過去→未来 |
過去→未来 |
最初の例 |
過去→未来 |
過去→未来 |
過去→未来 |
過去→未来 |
未来→過去 |
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過去→未来 |
過去→未来 |
過去→未来 |
未来→過去 |
過去→未来 |
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過去→未来 |
過去→未来 |
過去→未来 |
未来→過去 |
未来→過去 |
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過去→未来 |
過去→未来 |
未来→過去 |
過去→未来 |
過去→未来 |
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過去→未来 |
過去→未来 |
未来→過去 |
過去→未来 |
未来→過去 |
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過去→未来 |
過去→未来 |
未来→過去 |
未来→過去 |
過去→未来 |
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過去→未来 |
過去→未来 |
未来→過去 |
未来→過去 |
未来→過去 |
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過去→未来 |
未来→過去 |
過去→未来 |
過去→未来 |
過去→未来 |
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過去→未来 |
未来→過去 |
過去→未来 |
過去→未来 |
未来→過去 |
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過去→未来 |
未来→過去 |
過去→未来 |
未来→過去 |
過去→未来 |
対消滅対生成 |
過去→未来 |
未来→過去 |
過去→未来 |
未来→過去 |
未来→過去 |
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過去→未来 |
未来→過去 |
未来→過去 |
過去→未来 |
過去→未来 |
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過去→未来 |
未来→過去 |
未来→過去 |
過去→未来 |
未来→過去 |
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過去→未来 |
未来→過去 |
未来→過去 |
未来→過去 |
過去→未来 |
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過去→未来 |
未来→過去 |
未来→過去 |
未来→過去 |
未来→過去 |
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未来→過去 |
過去→未来 |
過去→未来 |
過去→未来 |
過去→未来 |
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未来→過去 |
過去→未来 |
過去→未来 |
過去→未来 |
未来→過去 |
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未来→過去 |
過去→未来 |
過去→未来 |
未来→過去 |
過去→未来 |
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未来→過去 |
過去→未来 |
過去→未来 |
未来→過去 |
未来→過去 |
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未来→過去 |
過去→未来 |
未来→過去 |
過去→未来 |
過去→未来 |
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未来→過去 |
過去→未来 |
未来→過去 |
過去→未来 |
未来→過去 |
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未来→過去 |
過去→未来 |
未来→過去 |
未来→過去 |
過去→未来 |
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未来→過去 |
過去→未来 |
未来→過去 |
未来→過去 |
未来→過去 |
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未来→過去 |
未来→過去 |
過去→未来 |
過去→未来 |
過去→未来 |
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未来→過去 |
未来→過去 |
過去→未来 |
過去→未来 |
未来→過去 |
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未来→過去 |
未来→過去 |
過去→未来 |
未来→過去 |
過去→未来 |
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未来→過去 |
未来→過去 |
過去→未来 |
未来→過去 |
未来→過去 |
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未来→過去 |
未来→過去 |
未来→過去 |
過去→未来 |
過去→未来 |
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未来→過去 |
未来→過去 |
未来→過去 |
過去→未来 |
未来→過去 |
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未来→過去 |
未来→過去 |
未来→過去 |
未来→過去 |
過去→未来 |
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未来→過去 |
未来→過去 |
未来→過去 |
未来→過去 |
未来→過去 |
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そしてこの式には、で表わされる全時間と全空間の畳み込みが、6回現れていることに注意してください。
これが、私たちのなかでもごく普通に行われている、相対論的粒子と光子との相互作用を表わした数式です。
私は、時間が淡々と過去から未来へ流れているなど、到底信じられません。
過去から未来へ進む粒子と分け隔てなく未来から過去へ遡る粒子も存在しています。
そして、これらは本当は粒子ではなく、時間と共に球面状に拡がったり、時間を逆行して球面状に拡がったりしている波なのです。
は、光の伝播を表わしていますが、過去から未来に拡がる球面波です。
は、相対論的粒子の伝播を表わしていますが、未来から過去へ拡がる球面波です。
場の量子論でファインマンダイアグラムを描くときは、計算が簡単なためにフーリエ変換後の運動量とエネルギーの表記で計算をするのが通常です。
従いましてあまり気付かないことなのですが、このように、馬鹿正直にフーリエ変換前の時間と空間の世界で数式を書いてみますと、この世界が実はとても不思議な作りになっていることがイメージできます。
因果律は成り立たず、波の重ね合わせになっているために、関係のみが存在し、もはや物を分けることなど出来ないのです。
重々無尽に綾なす華厳の世界が、量子電気力学の中には繰り広げられております。