連続性と非連続性は相反する概念ではない。(時間の流れ方に関する一考察)

 

これまでの議論でたびたび出てきた、

について、考えてみましょう。

これは、オイラーの公式により、

と書け、まさに波の基本的な式で、連続性の代表です。

 

一方、アインシュタイン−ドブロイの公式より、

・・・@

ですが、シュレディンガー方程式

より、エネルギーのハミルトニアン

形式的に、

と書けます。これを、@に代入してみると、は、

・・・A

という、演算子に対応することが分かります(これは、時間を進める時間発展演算子です。シュレディンガー方程式を形式的に解くと、となりますので、状態を初期状態から、だけ進める役割をしていることが分かります。)。

ですので、何がしかの関数にこれを演算させるということを考慮すると、

のクロスの項)

となり、連続性の代表の波であったは、という演算子の和やの和に離散化(非連続化)されます。

つまり、この宇宙は、連続の中から非連続の概念が顕現してくる作りになっている様です。

これをシュレディンガー方程式の形式解

に用いると、

となります。第2項は、のテーラー展開の形をしておりますので、時間をだけ変位させているという事が見てとれます。

 

現在の量子力学では時間はパラメータでありまして、どんな状況下でもただ淡々と流れる

ものですが、ここで、一つ大胆な仮定をしてみましょう。

「ニュートン力学は波動性の帰結」のところで、周波数を限りなく無限大に近づけてゆくと、時間の経過は限りなく0に近付いて行く、という話をしましたので、周波数の大小によって時間の流れが異なると考えてみます。

周波数、つまりエネルギーが大きくなると時間の流れが緩慢になりますので、時間方向の傾きも小さくなるという大胆な仮定をしてみます。そしてその傾きが、ボルツマン分布に比例すると仮定してみます。つまり、

としてみます。するとAはさらに、

という演算子になります。

ですので、何がしかの関数にこれを演算させるということを考慮すると、

のクロスの項)

(これは、プランクの黒体輻射の公式で、平均量子数を表わします。)

となり、連続性の代表の波であったは、という量子化されたボルツマン分布の確率、の和や、の和などに離散化(非連続化)されます。

これをシュレディンガー方程式の形式解

に用いると、

となります。第2項は、周波数に応じて、時間がだけ変位しているという事が見てとれます。

 

シュレディンガー方程式の形式解

において、

は、時間を進める事を意味する時間発展演算子ですので、

が、周波数によらず時間の進み方は同じという描像だとすると、

は、周波数によって時間の進み方が異なるという描像を表わしていると考えることが出来るのではないでしょうか。

そして、この描像が、古典力学(連続的な世界)から量子力学(非連続的な世界)に移行する際に現れた、プランクの黒体輻射の公式と類似している(Appendix参照)事は、実に興味深い事実です。

古典論では、エネルギー等分配則からレイリージーンズの公式が出てきましたが、量子論では、エネルギー等分配則が成り立たず、プランクの公式になることが分かりました。

この類推で大胆に考えれば、時間も等分配されていないのかもしれません。

 

これまで、何回も述べてきたように、空間と運動量はフーリエ変換で結ばれている一方で、時間とエネルギーもフーリエ変換で結ばれています。

フーリエ変換で結ばれているので、という不確定性関係が成り立ちます。

 

アインシュタインの光量子論でエネルギーが量子化されているとすれば、時間も量子化されていると考えられるのではないでしょうか。そして、時間の量子論?では、量子化された時間の等分配則が成り立たず、この結果、量子化されたエネルギーが大きくなるにしたがって、量子化された時間の進み具合は小さくなるのではないでしょうか。

実際、周波数(エネルギー)が大きくなればなるほどは大きくなり、エネルギーと時間の不確定性関係からは小さくなるはずです。

 

空間と運動量に対称性があるように、時間とエネルギーについても対称性が存在するはずなのです。

 

 

Appendix

 

ボルツマン分布則によると、温度の平衡状態においてエネルギーの状態にある確率はに比例します。

このときエネルギーが連続量であるとすると、系のエネルギーの平均値は

と書けます。右辺の分子を部分積分すれば、

より、

となります(これが、エネルギー等分配則)。

よって、黒体輻射のスペクトル分布は、古典論によると、

となります(レイリージーンズの公式)。

一方、量子論では、エネルギーは連続量ではなく、の整数倍の値しかとれないと考えます(アインシュタインの光量子論)。すると、系のエネルギーの平均値は、積分ではなく和となりますので、

となります。

分子は、

分母は、

なので、

となります(振動数によって配られるエネルギーが異なっており、エネルギー等分配則が成り立っていない)。

そして、黒体輻射のスペクトル分布は、量子論によると、

となります(プランクの公式)。