ファインマンの経路積分との比較
ある時刻tにおける状態が波動関数で表されるとき、物理量Aの期待値は、その物理量Aの演算子をAとしたとき、
で求めることが出来るというのが、量子力学の一般論です。
また、一般的に物理量Aについては、以下の式を満たすような、固有値と固有関数を求めることが出来ます。
固有値とは、物理量Aがとりうる値のことです。
また、固有関数を用いますと、
というように、波動関数は、物理量Aの固有関数で展開できます。このときの展開係数が確率振幅と呼ばれるもので、これを二乗したものが、物理量Aが状態iで見出される確率になるというのが、量子力学のコペンハーゲン解釈です。
さて、この期待値を求める式を、物理量Aの固有値と固有関数を用いて変形することが出来ます。
と定義
これは、ファインマンの経路積分の中に出てくる線形積分演算子を用いて期待値を求める手法ですが、ここにも、「包み込み」の概念が組み込まれています(ただし空間のみの包み込みで、時間の包み込みはありません)。
@で示される時空に、波動の源のがある。
Aそれが、によって、運ばれてゆく(時間の経過が伴わないので、運ばれるという表現は必ずしも適当ではありませんので、離れた空間に影響を及ぼすとでも言いましょう)。
B時空点には、全空間の波動の源であるの情報が、伝播関数によって集まってくる。そして全空間について足しこまれる。
C集まってきた全情報が、別なと相互作用をする。
Dその相互作用を、全空間で足し合わせると、物理量Aの期待値になる。
つまり、ある物理量Aの期待値は、状態間の相互作用を全空間について足し合わせたものと言えます。
この概念を、時間方向に対しても拡張したものが、「現代物理のおかしさ」や「諸行無常と相対論的粒子場」でお話した
などに見られるエネルギーの式に相当すると考えることが出来るのではないでしょうか。
ある物理量Aの期待値は、状態間の相互作用を全空間について足し合わせたものでしたが、
いまこの瞬間のエネルギーは、状態間の相互作用を全空間、さらに全時間について足し合わせたものと言えるのではないでしょうか。
この時間と空間の構造が正しいとすれば、
全ての過去、全ての世界(宇宙)の影響を包み込んだ形で、今この瞬間が成り立っていることになります。
自分だけの過去が原因で、今の自分があるのではなく、世界中の人々の過去、そして宇宙全体の過去の影響を受けて今の私があることになります。
そして、今この瞬間の私の行為が、未来の状態を変える原因となっています。
私だけの未来を変えるのではなく、世界中の人々の未来、そして宇宙全体の未来を変える原因となっていることになるのです。