物理学と哲学に関する随筆集
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物理学と哲学に関する随筆集(パウリ)より
場の概念と試験物体のデュアリティーは、現在の理論にもいまだ残されたままである。私はそこに、新しい数学的形式をもつ物理法則の必要性を感じる。試験物体を考慮しない限り、物理的のみならず論理的にも、場が存在し得ないような記述形式が必要である。場は原子などの物体によって測定される一方、その原子的物体自身は、場の源として記述される。新しい数学形式は、これらの事象間の相補性を的確に表現するものでなければならない。実際これら2つの可能性は、自然法則の適切な表現形式の結果として、自動的に互いに排他的にならなければならない。
似たよなアイディアは、ボーアやその他の人々によって、すでに提案されている。しかし強調するまでもないが、我々はいまだに仮想の域を全く出ていない。何1つ証明されたわけでもなく、そのアイディアが果たして成功するかどうかも問題である。そんな仮説的でしかない可能性に言及したのには理由がある。確かに伝統的な自然解釈の形式は、歴史的な哲学体系のなかで非常に明確に定式化されてきたものではある。しかしそれに基づいた考え方にのみ頼ってはいけない。それらの体系からは予知できない、新しい論理的そして経験的可能性に、心を開いていなくてはならない。そのことを広く忠告したかったのだ。
物理的な意味での「物質」や「エネルギー」がそうであったように、人間の魂は、我々の意識によって知覚されるいかなる客体に対しても、それにふさわしい概念を何とか想像することができるであろう。我々はそう確信している。なぜならば内的な人間の魂も、またそれによって知覚される客体も、どちらも同じ宇宙の秩序の支配下に置かれているものだからだ。(p10〜p11)
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